蒸し鶏

今週のAランチは棒棒鶏(バンバンチィ)だった。
この棒棒鶏に使う蒸し鶏、正確に言うと煮鶏(白鶏バイチィ)は、渋谷獅子林に居たときに教わった料理だった。
海水程度の塩加減(かなり塩っぱい)で15分煮込み。火を止め、そのままの余熱状態で20分置き、取り出す。別途スープでつけ置き用のスープ(これは普通の塩加減)に浸して終わり。
後は宴会なり、棒棒鶏などアラカルトのオーダーが来たら、仕込んだ鶏を出し、その都度それに合わせた調理をしていく。
鶏は、当時は羽をむしった丸のままを白鶏にしていた。
当時の調理長は張富財という香港から来た中国人だった。その張さん、仕上がった白鶏の尾下の肉(焼き鳥でいうボンジリ)だけを切り取りつまみ食いしていた。渋谷の獅子林は、結婚式をあげられるような大きなレストランだった。したがって白鶏も毎日5羽程度は仕込んでいた。その白鶏のボンジリだけが毎日なくなっていた。
まだ下っ端だった私、
(これはきっと美味しいんだろうな・・・)
調理長が休みの日にはオレが絶対食べてやる!と密かにねらっていた覚えがある。
私が20代前半だったころ、ほぼ50年前の話しだ。

白鶏の作り方は幾通りかあるのだが、今週はこの白鶏での棒棒鶏だった。棒棒鶏の胡麻ダレも粉チーズを加え濃厚な味に仕立てた。付け合わせは大根と胡瓜の千切り。
完食になった皿が下がってくると、ボンジリを探しにくる張さんが嬉しそうにそばに居るような、そんな気配が漂う。