老鶏(ラオチィ)

身体が硬い。曲がらない。

垂直立ちで身体を曲げて、手先は床に余裕で着いた。
身体は柔らかい方だったと思う。
最近身体のあちこちでギシギシときしむ感がする。同時になんだか疲れ感が募るのだ。腰や腕、脚などを動かして軋みを緩くしようと試みる。

垂直立ちで手を床に伸ばしても、膝先までしか手が伸びない。
(えっ、こんなはずじゃないけど・・・・。)
めちゃくちゃ身体が硬いじゃないか。
脚を広げても、手先は床に着かない。
きゃー、どうしよう!
何度も何度も勢いをつけて身体を曲げ、ようやく手先が床に届く。
身体は人より柔らかだったはずなのだ。いつの間にこんな堅さに・・・。

最近歩いていても、起伏のないところでも躓く時がある。若ぶって階段を手すりなしで上り下りするが、この身体の硬さはコケる可能性が高いだろうし、受け身もとれない・・・。きっと骨折・・・・。あり得る。

妻に
「おい、朝、いっしょにラジオ体操でもやろうか。」
持ちかけるが、
「一人でやって。」
と一蹴される。

お店では週2回、大きな寸胴でスープを取る。大きな寸胴のため一回取れば量的に三日は保つ。スープを作る時は、形状から「もみじ」と呼ばれる鳥足と老鶏(ラオチィ)を使う。
老鶏 は日本では廃鶏(はいけい)と言われる。玉子を産めなくなった老いた鶏のことで、堅すぎて食肉としても適さない。が、良いダシは取れる。大抵の中華屋さんやラーメン屋はこの老鶏を使っているはずだ。

70歳を回り、身体が硬くなり
ああ、おれも老鶏に近づいてきたんだな・・・
良いダシ出るかな、オレ?