5月9日、今日の日経新聞夕刊

夕刊一面の記事だ。
「タッチレス化で感染防止」という記事が載った。
「ドアノブや押しボタン・触らぬ知恵」というサブタイトルがつく。
要は他人の触ったものへ接触せずに、開けたり押したりする本来の動作をする工夫を掲載してあった。
(ここまでやるか!)という、すごい違和感を感じる。
「羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」類のものではないのか。

手と手を握り合い、肩を組み、ハグする。
こういう行為を否定された感じがする。
コロナウイルスはプラスチック表面に72時間生存しているとの報告がついていた。
だから何なのだ。
男と女が出合い、キスをし、抱擁する。
一生の間に、何人の出会いがあるのだろう。
その都度、身体接触が繰り返される。
結果、子供が生まれる。
子供を抱き上げる。祖父母や友人に抱かせることもあるだろう。
触らぬから安全なのか。

人と人の間に寛容さがどんどん少なくなってきている。
人と人の間に不信がどんどん広がり始めている。

そういえば、昔、20歳前後のころ、始めて上京した時に、道路に落ちていたタバコの吸殻を集め、吸っていたことを思い出した。
あの時には、タバコが大人になるステータスだった。
誰が口をつけたかわからないタバコを、何の疑問も持たずに吸っていた。
捨てられていたタバコは短く、そのタバコの根っこ近くに爪楊枝を指して吸った。
「シケモク」と呼んでいたタバコ吸殻は、決して不潔な対象ではなかった。


人と人の間に寛容さがどんどん少なくなってきている。
人と人の間に不信がどんどん広がり始めている。
人肌が恋しい。
もっと近くで人肌を感じたい。