2024年 3月 の投稿一覧

朝起きると身体が重い。
いつもの朝を迎えているのだが、身体がだるい。数日前から顔がむくむ。
飲み過ぎかも知れぬ。杯はさほど重ねていないが、ほぼ連日だ。
何か身体に変化が起きたのかな、と少し気になる。が、おそらく歳のせいと自分に言い聞かせる。

朝はすぐに仕事が始まる。厨房はほぼ一人仕事。発注、仕入れ、仕込み、全てを自分で仕切らなければならない。ま、ここは普通に仕事として許容範囲なのだが、負担になるのが、メニュー考案、作製、ともなう材料選定だ。
スマホに入れた予約を確認する。そのお客様の情報をできうる限り思い浮かべる。年齢、人数、予算はともかく、前回の料理、好み、冷蔵庫にある材料の多寡・・。
たくさんの情報が頭の中をよぎる。その情報を紙媒体であれ、スマホであれ、パソコンであれ、なるべく記録するようにしている。
忘れるのだ。早いときには数分で(あれ?)という状態になってしまう。
いつしかそういう自分にも慣れてきて、記録するのもさほど億劫でなくなってきた。

3月20日の売上累計が初めて対前年比を上回った。コロナ禍が明けて世間の日常は徐々に普通の日常に戻っていると聞く。そう思う。そう感じる。が、売上の数値は通常になかなか戻ってこなかった。
三月という歓送迎会シーズンも手伝ったのだろうが、ようやく数値として上向いてきた。
まだまだなのだが、瞬間的な売上増なのかも知れないが、気持ち的にホッとする。このまま月末まで延びて欲しいと切に願う。

春。いつもより身体が重い。だるい。自分でも顔のむくみがわかる。
春。風が強い。突風が、運転するバイクを身体もろとも運び去ろうとする。
春。シーズンも手伝ってお客様の増えた様が数値に表れる。
春。いろいろな変化に、ようやく新しい年の息吹を感じられるようなった。きっと来年の春は身体がもっと重くなるだろうに。それでも、春、来て欲しい。



ピアノの鍵盤

四谷飲食業喫茶組合という飲食店専用の健保組合がある。
私が加入している団体は戦後出来たらしいのだが、その生い立ちを私は知らない。ただ健康保険や厚生年金を代理でやってくれるために、私にとってはありがたい組織だ。前勤務先から加入しており、私が独立してからも会社として加入した。おつきあいは30年を優に越える。

私は単なる一会員としてずーっとおつきあいしていたのだが、この組織も例に違わず高齢化が進んでいた。気がつけば70歳の私が最若手の一人になっていた。
会員数が少なくなり、高齢化が進み、でも会計や年一の旅行積み立てなど執行部のやることはけっこう煩雑で多岐にわたる。

ある日、この会の会長から上部組織になる東京都飲食組合の総会に出てくれと頼まれた。何年もおつきあいしているのにこの会に何も貢献してないことが私は少し負い目になっていた。
引き受けた。

以後、この上部組織の会合が年に数回あり、出席することになる。
いつも銀座の東武ホテルだ。会の後には懇親会がある。パーティはドレスコードがあってもおかしくないくらい気品がある会場だ。当然相応する料理も出てくる。
会員が飲食店に関わる方たちが中心のため、会の開始は14時30分など、繁忙期を外して始まる。

この日は総会。決算が行われ、事業案が発表され、ともなう予算も説明がある。
ちゃんとした会合なのだ。そして総会終了後は隣室に設けてある懇親会。平日のため総会終了で帰る方も多かったが、私は残って料理を楽しんだ。
こういう会は料理も手の込んだものが出てくる。それが見たかった。食べたかった。だからというわけでもないが、アルコールは乾杯ビールを半分程度、他の飲み物もかなりおさえた。

この日の私はお腹の調子がちょっと良くなかった。
おならがプーピー出てくるのだ。トイレに行ってもおならは絶好調を維持していた。食事の最中もチョコチョコ音無しの構えで出てくる。匂いがないのが幸いだった。が、かなりの頻度で出てくる。途中、何度もトイレに・・・と思ったが、会話が弾んでいる状況で行くタイミングを失っていた。

そうするうちに夕方の5時になり閉会。
銀座から新宿のお店に戻るまでの所要時間は30分強。
直行すれば5時半にはお店に戻れる。開店時間を30分ずらすと留守居の女性に
昨夜から 頼んでいた。

東武ホテルを出て丸ノ内線「銀座」駅に向かう。ホテルから駅まで距離にして500mほど。人混みを避けるために地下道を歩く。丸ノ内線の改札口も地下道の延長にある。

ご存知だと思うが、銀座の地下道は東京駅にも皇居近くも日比谷公園にも繋がっている。複雑で巨大な地下街だ。それも曲がりくねっているだけでなく上に下にのアップダウンもある。短めの階段があちこちにある。

階段を駆け上がるときに、来たぁ!屁だ。
一段上がるごとに
パ、ピ、プ、パ、ポ
と短めの音が連発で出た。階段がピアノの鍵盤だ。
あっ・・
と後ろを振り返ったが、誰もいない。
ホッとする。
視線を感じ、後ろから顔を横に向けると、反対側に階段を下っている人がこちらを見ている。
(あは、聞こえてた・・・)
その人、笑うでもなく怒るでもなく足を止めて私の顔を直視している。

決まり悪くなった私、その人を置いていくように改札口への足を速めた。
残った階段を駆け上がる。

鍵盤を踏んだ足は、また音を出した。
ぷ、ぴ・・・・。