料理と食材

料理は食材を選んだ時点で6割~7割終わっていると思う。
それだけ食材の選び方は料理の美味しさに占める割合は大きい。
どんな食材も一口はそのままで食することをお勧めする。ひと噛みだ。
生肉であっても、例えばモヤシであっても。
生肉は、生肉の状態でひと噛み。塩や下味をつけた段階でひと噛み。
さらに1分~5分たった状態でひと噛み。
いつもひと噛みする必要はないけれど、どんな食材も一度はひと噛みして欲しい。特に料理に携わる仕事であれば。

例えば「モヤシ」
生でのひと噛み。生臭くて食べられたもんじゃない。
でもそのモヤシが、火を通すことでシャキシャキした触感に変わり、火を通し過ぎてフニュと美味しくない柔らかさになる。
この変化を面白いと感じるところから、調理が始まると私は思っている。
だから一口(ひと噛み)は食材の味、食感、香り、など確かめてほしいと思っている。

食材は季節で表情を変え、塩で落ち着き、火を通すことで性格を変える。
良い性格になるときもあれば、荒れた性格にも変わる。
付け合わせる素材で、結婚式に出かけるフォーマルに変われば、子供たちに持たせるお弁当にも変わる。

実に面白い。
このことを面白いと感じる感性があれば、日常がとても楽しくなる。
調理に携わる仕事に就いて、つくづく「良かった」と感じるのは、食材の美味しさを発見した時であり、この発見をお客様と共有する時だ。

飲食の仕事は、一般サラリーマンと違って拘束時間が長い。仕事内容も結構ハードだ。給料もけっして高くない。
社長として給与を上げたいと思うのだが、これだけ厳しいと給与に反映できない。そういう従事者に対して私は何をすることができるのだろうと考える。
食に対する喜びを伝えるしかないのかな、と思う。