風は冷たかったが、お昼過ぎ妻と二人で歩いた。
知人の母親が展覧会を開くと聞き、見に行った。
小学館「ビッグコミック」が創刊されたのは中学三年だったと覚えている。
表紙を飾った井坂芳太良のサイケデリックなイラストが強烈な印象に残る。
内容はさいとうたかをの「捜し屋はげ鷹登場!!」(後にゴルゴ13に)、石森章太郎「佐武と市捕物控」などなど。 正義の味方主体の子供漫画と比べて、多少ないと”悪”の要素を織り交ぜた大人向けの漫画誌だった。ちばてつやの相撲をテーマにした「のたり松太郎」など、粗暴な松太郎が規格外の力で角界を席巻する漫画は、まだ世間知らずだった私をドキドキさせた。
しかし典型的な男であった私に少女漫画は全く興味がなかった。「リボン」という名の雑誌は知っていても中を見ることはなかった。異様に目が大きくて、異様に首が長くて、異様に細身の女主人公に、人としての感情移入は考えられなかった。。
そんな私が田淵由美子を見に行った。
何故か。
チマキのパッケージデザインの可能性を考えたから。
展示会は弥生美術館での開催だった。
併設されている竹久夢二美術館でもある。
入館料1,000円。
小道を挟んだ反対は東京大学。美術館から東大の校舎と校庭が塀越しに見える。
美術館には50代~60代とおぼしき女性が数名並んでいる。
女性漫画の経験のない私は何か奇妙なものを見ている錯覚に陥る。
ん?
強烈に興味が湧いてきた。
気がつけば、妻も若干ソワソワしている。
「興味あるの?」
「だってリボン(雑誌)はいつも見てたんだもん。」
ふーん・・・・漫画を見て笑っていた子供の頃の私を思い出しながら
(なるほどね、そうかもね)と自分の頭の中を妙に納得させていた。
建物は三階建て。
さほど難しい造りではなさそうなのに、順路は矢印がないと迷いそうなくらい1階から3階、2階、1階と巡る。
古くさいビルのちょっと湿っぽい空気の中、飾ってある漫画やイラスト絵を見る。この絵を納めたパッケージを想像する。
さすがにお目々ぱっちりの少女像は難しそうだが、動物をあしらった絵や静物を描いたものは
(あるんじゃない・・。受けるかもしれない・・。)
と想像をかき立てる。
新宿への帰り道、どういう形で飾り付けようかと考える。
言問通りから後楽園へ、東京ドームを左手に見ながら大久保通りを一路新宿へ。
気がつけば新宿到着。15,000歩。
足は疲れていたが、田淵由美子氏の娘に、パッケージ業者からすでに送られてきているチマキの白箱の画像を送る。
「イメージを膨らませておいてください。」
との伝言とともに。