12月5日、日曜日。
普通にお休みだった。
妻が
「神保町ってどういうところ?」
たぶんテレビで神保町の、何か美味しいお店を紹介してたんだろう・・と察する。
「じゃあ、今日は神保町界隈を散歩するか。」
お昼を、久しぶりに新宿三丁目にある[王ろじ」のトン丼を食べるつもりだった。
お店の前まで行き、すると、なんと10数名の行列が。
時間はちょうどお昼頃。
二人で顔を合わせ、以心伝心で
(今日は別なところで食べよっか)
そんな流れで出てきたのが”神保町”だった。
新宿駅が近くだったこともあってJR新宿から総武線で水道橋まで行った。
水道橋駅下車で東京ドームとは反対方向へ歩く。
バイクや車で通り過ぎることは多々あるが、歩き回った記憶は少ない。
でもこの町が人の興味をそそることは十分に知っていた。
あちこちにある古本屋。
「古本屋って神田が多いんじゃないの?」
と妻が聞く。
「神保町も神田だ。神田神保町ともいう。」
日曜日でお休みしてるところも多々あるが、古本屋だけでなくあちこちにある飲食店も、いかにも老舗というたたずまいを見せている。
そして少なからず行列をなしているお店がけっこうあるのだ。
妻もそういうお店に興味津々。
「あぁ、ここ、テレビに出てた!」
(そりゃそうだろう、お前のニュースソースはそれしかないだろう!)
とは言わなかった。
神保町の、列をなしてなくて、それでいて美味しそうなお店で食事。
このお店、待ち時間こそなかったが、食事を取っている間にも一定の間隔でお客様が来る。
(うちのお店も、開けてれば、お客様来るかな・・・)
とついつい商売気が起きがちになる。
食事を終え、帰路は歩きと決めた。
神保町から、専大前、九段下、靖国神社、と靖国通りを歩き市ヶ谷まで。
そこで都営新宿線に乗る。
妻は小田急デパートか京王デパートに行きたいと言う。
「お、いいね。欲しがっていたお前のコートを買おう。」
数万円する高額商品は、妻は自分では買う決断がつかないのだ。
覚悟はしていたが、あちこち回って品定めをする。
女の買い物と、時間のかかることを半ば覚悟して回っていた。
が、女性店員と妻の間に割って入り
「あ、これ、いいよ。けっこう似合うよ。」
「ほら、お腹周りもすっきり見えるし・・・」
妻に対して、売りたい女性定員とタッグを組んで、数点のコートを奨める。
やっと決めてくれた。
デパートを出ると、すでに5時近くになって周りは薄暗くなり、ネオンが映えてきている。
靖国通り、歌舞伎町界隈に来た時、広い歩道の上に人だかり。
(ん、何かあったか?)
人だかりは路上に円陣を組む様に集まっていた。
その中心に一匹の大きなネズミが逃げ場を失って立ち往生していた。
そのネズミを
「東京ヤッベー!」
「新宿怖ーっ!」
若い娘が吠えている。
(お前、どこの田舎から来たんだ。お前の田舎だっているだろうし、鹿とかイノシシだっている様な田舎から出てきて、ほざいてんじゃないぞ!)