小さな診療報酬で大きな診療

あんなに足繁く通っていたゴールデン街。
なんだか近くて遠い町になってきた。

ちょっと食べるだけでお腹いっぱいになる。
ちょっと飲むだけで眠くなる。
良いか悪いかは別にして、私の身体がそんなサイクルに入ってきたようなのだ。

師走になって少し忙しくなってきたのだが、予約のない日はフリーのお客様を期待できない立地なだけに、メチャクチャ閑な日がある。師走、忘年会のシーズンでも閑な日が出現してしまうのだ。
商店会長でもある私は、そんな時に会員のお店をまわる。たいした金額を使うわけではないのだが、顔を見せることによって商店会の会員だということを思い出させる様にしている。
が、それにしても一回にまわるお店は最大2軒が限度だ。

自分のお店にいて、気の合うお客様と連れ立っていく時もある。
相応の立場の方だったらゴチになったり、割り勘だったりするが、ほとんど私が負担する。
そうやっての梯子酒は、私は嫌いじゃない。
自分の好きなお店に連れて行って、そのお店の自慢をさりげなくする。
連れて行く方のほとんどがお店を気に入ってくれる。

たくさん食べられなくなり、アルコールの量もほどほどになってきた時に、当然の様に行くお店の数も限度が出てくる。
そして年齢的な体力問題もある。
「さあ、もう一軒!」という体力が戻ってこない。

かくしてゴールデン街は近くて遠い町になりかけてきている。
そのゴールデン街に、ほぼ半年ぶりに出かけた。
私が通っていたお店は少なくとも5軒はあった。
1軒は看板の灯が消えている。
1軒は看板すらなくなっていた。
(ありゃありゃ・・・?)
1番街から五番街まであるゴールデン街。
通りを一本間違えたか、と思いき、歩き返すが、やっぱりない。ない。

また一軒、別なお店に行く。
そこで看板の、消えているお店、なくなっているお店の情報を仕入れる。
なくなっているお店は、母の介護で茨城に行ったと。
消えているお店のママは心不全で急逝と聞く。50代半ばの若さで。

いつもの笑顔で迎えてくれるお店が二つも消滅。
脱力感が半端ない。
両方のお店のママたちは、それぞれのお客様を30名ほど集めて歓で忘年会を催してくれた。そんなよしみもあったが、もう戻ってこない思い出に変わった。

コロナ禍は、マスクやソーシャルディスタンス以外にも実にいろいろな遮断を突きつけてくれる。
もうそろそろ終わりにしてくれ、そう切実に思う。
PCR検査やワクチンなどで潤うお医者さん、本来の仕事である、人の健康を診てくださいな。診療報酬が少なくても・・・。

コロナを収束させるために、貴方たちの力は大きい。
笑顔を含めて喜怒哀楽を隠すマスクはもう終わりにしましょうよ。
でないと、知らない間に人が消滅しちゃいますよ。