飲食店の原価率はだいたい三割といわれる。
効率の良いラーメン店などで20~25%程度。
歓の原価率は、調理長を雇っていた時には35%程度だった。月によっては40%に迫っていた時もあった。
何度も「今月の、今時点での原価率は○○%だ。」と伝えた。が、なかなか下がることはなかった。
自分で厨房に入り、原価を管理し始めると、この原価率を下げる作業はけっこう厳しいということがわかった。歴代の調理長たちもいろいろと悩んだんだろうと察する。
料理を作るだけだった、その調理長たちの比して私の利点は買い出しに行けることだ。平日は北新宿にある個人のコンビニに弁当納品が毎日ある。その帰り道に業務用食品卸の店に寄れるのだ。
店に納品する業者との値段を比較し、こまめに仕入れした。お店に納品している八百屋には悪いが野菜類の仕入れはかなり改善したと思う。
原価率35%を下回るようになるのは早かったが、そこからの1%はかなり厳しかった。私が厨房に立ち半年たって原価率32%。
お店に来るお客様の顔を見てると、原価率(利益)よりも美味しいと言ってくれる顔を見たくなる。いきおい原価率そっちのけで料理を出すことも多々。
この辺のバランスを取るのが非常に難しい。
お客様が一番喜んでいただけるフカヒレの値上がりが半端ない。値上げは二段階目だ。高い素材は業者も気を遣って値上げは小さい範囲で上げてくるのだが、業者側も限界なんだろうと思う。
小さいフカヒレが一枚700円程度で仕入れしていた。これが1枚980円になった。
今まで4000円コースからフカヒレを出していた。4000円コースの原価はおよそ1200円。ふかひれで980円を使うとのころ200円強。コース料理は少なくとも6品は提供する。フカヒレ以外の5品を200円で・・・・・。無理!
小さいフカヒレなのだ。手のひらの半分くらいの小ささなのだ。そんな小さなフカヒレすらコース料理に組み込み無のは厳しすぎる。
値上がりは当然フカヒレだけではない。ほぼ全品目が値上がった。低価格の優等生だったタマゴも上がった。
日経新聞には賃上げや最低賃金などのニュースが流れる。まして人手不足の昨今。多少の時給を上げても人は集まってこない。大手のチェーンは体力に任せて数百円の賃上げをしてくるが、小規模店舗は数十円上げるの四苦八苦する。上げられないお店も多いのではなかろうか。
物価高に賃金が追いつかない「実質賃金」はひらく一方とニュースは伝えるが、一般的にベースアップは年一回だ。物価高との差が小さくなるのは少し先になる。生活に反映されるのはどうしても時差がある。逆に真っ先に切り詰めるのは亭主の小遣いであり外食だ。
コロナ禍の影響が残り、物価高と家庭や会社の節約状態から抜けるのは、もう一年あとか。