なまけものはイノベーション上手!

お店がヒマな分、仕込みははかどる。
ほぼ一人で仕込むために、段取りはよく考える。
次の次くらいは考えながら目の前の作業をかたづける。
でもその仕事をやりながら、
(はて、オレはこんなに真面目だったっけ?)
いや、かなりの怠け者だったと思う。遊ぶことは大好きなのだ。
仕事ほったらかしで遊んでた記憶は数多くある。
遊び中心だったから仕事はなるべく早く終えたい。
早く終える方法は、悪知恵と呼べるくらい色々と考えた。
早く終える=楽できる、だったのだ。

家庭料理とプロの料理の違いで、よく
「手の込んだものは家では出来ないからね。」
と言うが、それは違う。
プロの料理屋は使い回しがいろいろできるからだ。
海老が入荷したら、いったん塩とカタクリで洗う。
洗った物を水ですすぎ、さらに塩、胡椒でぬめりが出るまで混ぜ合わせ、それに卵白を加える。海老のぬめりの中に卵白が馴染んだところで、カタクリで締める。ここまでが下味だ。下処理とも言う。
下処理した海老は、ここからエビチリにも使うし、エビマヨにも使う。炒め物、前菜と仕上がりはいろいろと様変わりする。
料理の本や料理教室で教わるのは下処理からの工程まで含まれるが、料理屋では下処理が済んだ状態から始まる。
だから早いし、味も安定する。見た目もほぼ毎回変わらず仕上げられる。
けっして手が込んでいるわけじゃない。

その下処理を含めて、毎日毎日のルーティンがある。
下処理は海老だけでなく、豚、鶏、牛、魚、野菜の類いまで無数にある。
そのほとんどを、「炒める」「煮る」「揚げる」という数少ない工程で終えるようにする。その組み合わせの妙であり、「何か」をちょっと加えるだけで素材はいろいろと顔を変える。
そう、女性の化粧と似ている。紅の色を少し変えるだけで様変わりする。紅とアイシャドウや頬紅の組み合わせと似ている。服やアクセサリーは料理で言えば食器にあたるのだろうか。

料理にしてもいかに多くの引き出しを持っているかというのが大きなポイントになると思う。
実際の作業では、その組み合わせを考えながら下処理を進める。
複雑な料理を作りたいためではない。楽して料理を仕上げたいと思うから、ヒマなときに神経を集中させて、楽できる(なまけられる)ことをあれこれ考える。

さあ、なまけるために、もうちょっと行程を少なく出来る方法を考えようかね。