久しぶりに床屋に行った。
2ヶ月ぶりだろうか。行こう行こうと思っていたのだが、忘年会シーズンの繁忙期もあって行けずにいた。今日は日曜日で本来定休日なのだが、夕方から予約がある。10過ぎに床屋に向かった。
以前通っていた床屋は最近混み合っている日が多く、4~5名並んでいる。1時間待ちで並びたくなかった。そういう事情で、床屋を変えた。
医大通り沿いの、市ヶ谷方面靖国通りに出る手前にある、老夫婦で営んでいる床屋にした。店内には山の写真が数多く飾ってあり、山好きな主人の趣味が前面に出ている床屋だ。私の山好きも手伝い話しははずむ。私よりも格段に多くの山に行かれている。
この日は先客がいた。ご主人が先客の整髪をしていた。
奥様に席に案内された。手にはバリカン。
(お、今日は奥様が散髪されるのか。)
奥様の整髪は初めてだった。
床屋のイスは座り心地が良い。どこの床屋に行っても、私はまず寝る。寝る癖がついているように座った途端に眠気が襲ってくる。
この日も床屋に取り付けてあるイスに座り、目をつむった途端睡魔が寄ってくる。頭にはバリカンが・・・・
ん?ん?
バリカンが頭に突っかかってる。頭皮に接触しているバリカンが、ウィーン、ウィ、ウィ、とスムーズに動いてない。
薄目を開けて、鏡を除く。鏡の中で奥様が私の頭にバリカンを当て動かしている。そのバリカンを持つ手が震えている。
私の左手も少し震える。震えを制御できないのだ。この状態で10年は経つだろうか。軽い神経麻痺だ。右手はなんともないのだが、左手だけが小さく震える。緊張すると震えは大きくなる。
おそらく、この理髪店の奥様は私と同様の病気だろうと思われる。
ひげ剃りだったら問題だが、頭皮にあてたバリカン程度じゃどうってことない。
開いた薄めを閉じて、また、しばしの眠りに戻った。