金魚鉢

網膜剥離で4日間の手術入院。
そして退院して3日が経つ。
眼の中が水を張った金魚鉢になり、その喫水線を毎日見ている。
損喫水線が日を追うごとに下がってくる。

病院での説明は、
角膜を切り、眼球の中の水(硝子体)を抜き取る。
水を抜いた後、はがれかけている網膜をレーザーで眼底に縫い付ける。
その後、硝子体を抜いた眼球にガス(気体)を注入し、手術を終える。

手術後は、硝子体の代わりにガスが置き換わる状態になる。
執刀を担当した先生の話によると、ガスが時間を掛けて硝子体に入れ替わるそうな。その間約一ヶ月と説明される。

術後まだ三日目だが、一日一日喫水線が下がっていく。
喫水線の上部がハッキリ見え始め、下部が水中にいる様に屈折した視野になる。
これがあたかも水のなかに顔を沈め、目線ギリギリで顔を出した状態に感じるのだ。
はて?

先生の説明では、もともとの硝子体は液体であり、あとで注入した気体と入れ替わるはずなのだが、ハッキリ見えるはずの硝子体の方が上なのだ。
ここで気がついた、眼球が認識する画像はレンズを通すために、逆さまに映る。
それを脳が上下(たぶん左右も)反転した状態で画像処理するのだと推定した。

本来は軽くて見づらい気体が上で、画像をハッキリ認識する液体(硝子体)が下にあるはずなのだが、画像の反転処理のせいで、あたかも喫水線に顔を出した様な感じに見える。
妙なところで人体の不思議を認識する。

ただ喫水線が下がるのは、眼が正常に戻るのを実感でき、とてもうれしい。