歯磨き粉

風呂に入る。
お風呂の熱でのぼせやすく、あまりお風呂は好きじゃなかった。
それが加齢とともに浴槽内の滞在時間は長くなってきた。
加齢と言うより高齢が風呂好きにさせた。

マンションの6階にある我が家は狭い。
当然風呂場も狭い。
広さと時間を有効に使うために、お風呂に入るルーティンがある。
浴槽に浸り身体が温める。
後々のひげ剃りを考えて、浴槽には鼻の下まで浸る。
浴槽から上がると、まず頭を洗う。
シャンプーの残った泡を脇の下と股間に持って行き、それでもって洗う。
シャワーで頭を流すと身体をあらためて洗う。
最後にひげそりと歯磨きをして浴室を退場となる。

ルーティンとなった作業が終わり、最後の歯磨きをするばかりとなった。
が、いつもあるところにいつものチューブの歯磨き粉がない。
(なんだよ、ちゃんと定位置においとけよ!)
「おーい、歯磨き粉がないぞぉ!」
と怒鳴るも、奥の部屋でテレビ鑑賞の奥方には声が届かない。
(まったく、なんだかなぁ・・・)

狭い我が家、浴室の隣はキッチンだ。キッチンにも歯ブラシと歯磨き粉は置いてある。1歩、2歩とキッチンに踏み出さなければならないが、割と近くに常備してある。
フローリングの床を塗らさない様に慎重に手を伸ばして歯磨き粉を取る。

さあ、歯磨きだ。
と、キッチンから取ってきた歯磨きを右手に持ち、左手でフタを開けようとした。
あれ?
左手にも歯磨き粉が・・・・。
えっ?
おれ、歯磨き粉を持ったまま歯磨きを探してたの!

頭はまだまだ老化はしてないぞと、自分ではぼんやりとした自信を持っていたが、その自信が、音を立てて崩れていく・・・・・・。