床屋に行った。
促されて大きな鏡の前に座った。
見た目は同年齢よりも若く見えるんだろうなと思っていた自分だったが、久しぶりに自分の姿をまじまじと見た。
ん?白髪が増えた?
まだ40か50代の頃だったと思うが、座っていた私の頭を後ろから見て妻が
「あー!禿げてる!」
続けて
「私は禿と結婚した覚えはない!」
と叫ぶ。
だから、禿げていたのは自覚していた。隠すつもりもなかったし、そもそも自分の身なりに気を遣うタイプでもなかった。
今日床屋の大きな鏡の中の自分を見つけて、あらためて「老い」を見つけたが、これって、もしかして、この最近の廃業とかの経験が影響している?
それなりに、これまでの生き方だとか、これからの生き方だとかを呻吟していた。そして私に関わってきた妻や社員たちのことも慮った。
21年間続けたお店を閉めたのは私にとっても大きな節目だったが、引きづられるように運命をともにした妻や社員に与えた影響も考えさせられた。
そういうことが「白髪」という形で出た可能性・・・
単なる「老い」・・
鏡の向こうの私が、こちらの私に問いかけていた。
もう少ししたら新しい船出が始まる。
その船出は果たして正しかったのだろうか。
その船出に、また乗り込ませる船員に対してどういう責任を持てるのだろうか、とあらためて問い直す自分が、鏡の向こうにいる。
本来は『ボン・ボヤージュ』と意気込みや勢いがついて回るはずが、妙に静かな自分も鏡に映っていた。
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