結婚記念日に男らしさを想う

42回目の結婚記念日だった。
お店が閉まったころ合いを見て
「飲みに行くか?」「食事は?」
と誘ったが、最近はお酒を飲むと調子悪いようで
「行かない」
と、つれない。

最近妻は少し太り気味だ。本人も気にしている。
確かに下腹が少しせせりだしてきた。
体重も増えているようで、これまた体重計を見てため息をつく。
「何キロだぁ?」
と体重計のメモリをのぞき込むと
「ダメ!」
と言って、妻はつま先で電源を落とす。

「気にするな。男は痩せてる女より太り目の女が好きだ。」
「だってぇ・・・・」
「俺のなかでのお前は、出会ったころと全然変わってない。」
「そんなこと言うの嘉博さんだけだよ。」
「十分だろ。」

年に一回の同窓会で同級生の女子が集まってくる。その女性たちも私からしたら「あの娘(こ)」だし「この娘」だ。
町中で知らずに会うと、どこぞかのオバサンだし、人によってはオバアサンに見えるが、同級生と認識したとたん、昔の面影が今の顔に上書きされる。

男って馬鹿だから、女に恋したくなる。
妻が体重を、太ってきたことを気にするが、私の中では出会ったころの彼女だ。
見かけは確かにそれなりに老いてきた。
でも時折見せるしぐさは、出会ったころの彼女のままだ。
瞬間瞬間でキュンとさせる「女」を見せる時がある。

だから私も「男」でありたいと思う。
性的な男という意味ではなく、「男らしさ」を持つということ。
いろいろな解釈はあると思うが、私の中の「男らしさ」とは、その相手の女性に対して「女」を意識することだと思っている。

ま、私からの一方的な思いだから。妻は私のことを何と思っているのやら。
それでも42年が経った。
おそらく金婚までは(お互いの生死も仲も)持つかと思うが、この歳になってくると、いずれどちらかが先立つことを考えてしまう。考えてしまうほど私の中の体力としての元気も小さくなった。元気でいられるという自信もなくなった。

だから、まだお互いの意識がしっかりあるうちに、支えあったことを、支えてくれたことを言葉にいつかしようと思う。彼女に残そうと思う。
苦労させてるけど、こんな俺を選んでくれたことに後悔させないために。

結婚記念日に際して、思いついたことをちょっと書いてみた。