家庭内別居

月曜日から喉がガラガラしていた。
身体が時々寒気を催す。
あれっ?
水曜日朝、お店の掃除が終わり、10時半の弁当配達を済ませたころは、自分でも風邪をひいているのが分かった。
時が時だ。

配達から帰ったら、相棒の女性に
「このまま帰っていい?休む。」
「どうしたんですか?」
「どうも、これは、風邪だね。」
「検査受けてきたらどうですか?」
「いやだ。治療のない検査だけだったら行く意味がない。どうせ重症のないオミクロン、たんなる風邪だ。むやみに感染者数だけが増え、マスコミの好餌になるだけ。そんなマスコミの片棒を担ぐのは絶対いや。」

と虚勢を張るが、風邪はおさまらない。
体温は38度6分まで上がる。何よりのどが痛い。お茶の渋みが喉に刺激と感じるほど痛い。鼻水も時を置かずズルズルとなってきた。

家内はパートに出ている。
途中のコンビに買ってきたのど飴や風邪薬を飲み、布団に入る。
布団の中から、今日14時から出席予定だった区の高齢者ケア会議の欠席を伝える。ただそのあと16時30分から厨房機器メーカー「ホシザキ」の担当者と会う。
これはキャンセルできない。
飲食店強化支援事業助成金200万円を申し込んであり、冷凍、冷蔵庫などの見積もりが必須だ。それも申請日時が今週末の28日まで。
見積もりがあれば、それを元に申請書は作れる。
風邪くらいでもこのくらいの作業はできるはずだ。いや、やらなければ。

枕元にパソコンを持ち込むが、身体はけっこうギシギシとうなってきている。
30分作業しては一休み、30分しては一休みの繰り返しで、作業ははかどらない。

そうこうするうちに家内が帰ってきた。
家にいる私を見て
「どうしたの?」
事情を説明すると
店にいる女性と同じように
「検査をしてくれば?」
いやだ。絶対いやだ。自力で治す。
自分の回復能力を信じる。

夕方、別な部屋に布団が引いてあった。
「ここで寝て。」
わかった。
窓が一つしかない4畳半の小部屋。
隔離部屋だ。

ま、これはこれで気兼ねなく、だれからも邪魔されずに仕事ができる。
家内に風邪薬、喉薬だけ頼み、早々に布団に入る。

オミクロンによる蔓延防止期間は、多少の延長があったにしても今回で終わりだと思う。
コロナの最終章だ。
その最終章にあらがうように、私にウイルスを仕掛けてきて、見事にかかった。
少し悔しい。