54億円

商店会の会合があった。
いつもの会合ではなく、新宿区にある各商店会の会長及びそれに準じた役員方の集まりだった。

新宿には大きなデパートがいくつかある。
各デパートの総務を担っている部署に、年ごとにこの会合の幹事役が回ってくる慣習があるそうだ。会合の、日時、場所、会費の設定はともかく、案内状も発送していただく。
メンバーは、上記の通り各商店会の役員が招かれる。が、実質は数名を除いて、新宿のメイン通りに面するビルの持ち主ばかりだ。毎日の暮らしにヒーヒーする私などとは住む世界が違う。

ここ最近は、場数を踏ませるためや、上級区民(?)と接することで得られるかもしれない新しいビジネスのため、若手の副会長などに出席させていた。近い将来、若手に委譲するだろう会長職の、慣れさせる準備も兼ねていた。

予定していた副会長の都合が悪くなり、私が出席することとなった。ほぼ3年ぶりとなる。テーブルの上には食事のメニューと一緒に、全員の名前と席位置が書かれた名簿も添えてあった。

私の隣は空席だ。遅参するらしい。代わりに幹事役のデパート係員が間を持たせるために着席する。女性だったためにそのテーブルを囲むお偉方も歓迎一色。

女性の口からデパートの日常が話題に上がる。
デパートの顧客だけを招く日が年一であるらしい。その日は、このVIP客たちのためだけにデパート全館がお休みになるそうだ。この、贅を尽くした優遇さにも驚きだったが、この日の売上を聞いてぶったまげる。

何と、一日の売上、54億円なそうな!

テーブルを囲む、新宿の、老齢な名士たちも口を紡ぐ。
「何人で、何を、どれだけ、買ったら、そういう金額になるの?」
あんぐりと開けた口から出た言葉がそれ。

デパートの係員の言葉は続く。お一人で月に2億円くらい使うVIPなお客様もいるという。ふたたび同じ質問が飛ぶ。
「一人で、何を、どれだけ、買ったら、そういう金額になるの?」

このデパートにはVIP客専用の部署もあると聞いてはいたが、次元がまるで違う。
ふと見た自分の足下の、18,000円の靴がワラジに見えた。